ニュースの概要

農林水産省の2025年度調査で、食肉処理施設が処理したジビエの利用量が3,155トンとなり、調査開始以来の最大値になったと報じられた。前年度から17.8%の増加である。中心はシカとイノシシで、農作物を荒らす害獣として捕獲された個体を、廃棄せず食肉として活かす流れが広がっている。背景には、処理施設の整備、衛生管理の知識の普及、飲食店や小売店向けの商品づくり、地域ブランド化の取り組みがあるとみられる。一方で、捕獲した個体を素早く施設に運べるか、そして増えた肉を安定して売り切れるかという、供給と需要の両面の課題も残っている。

引用元: ジビエ利用量が過去最大の3,155トンに 食肉処理施設の活用が拡大(Kariudo)

分析・見解

17.8%増を支えたのは捕獲数より受け皿の拡大

ジビエの利用量が伸びたと聞くと、捕獲頭数が増えたからだと考えがちである。だが本質は違う。捕獲された個体のうち、食肉として使える状態で施設に届く割合が上がったことが大きい。

従来、捕獲されたシカやイノシシの大半は、山中に埋められるか焼却されていた。食肉にするには、仕留めてから短時間で内臓を処理し、冷却しなければならない。この時間の壁を越えられる地域が増え、処理施設という受け皿が機能し始めた。利用量の増加は、捕獲の成果というより、搬入の仕組みづくりの成果と読むべきである。

小さな施設が多い構造と、品質のばらつき

国内のジビエ処理施設は、年間の処理頭数が数百頭に満たない小規模なものが多い。畜産の食肉センターのように、一日に何百頭も扱う設備とは性格がまったく異なる。

小規模であることは、地域に根ざした柔軟な運営ができる利点になる。しかし同時に、肉質や解体の技量にばらつきが出やすい。狩猟者の腕、撃った場所、運搬時間によって、同じシカでも味と安全性が変わるのである。国のガイドラインや認証制度が整ったとはいえ、現場の平準化はまだ途上にある。

数量が増えるほど、売り先の確保が難しくなる

牛肉や豚肉と違い、ジビエは季節と個体ごとに品質が大きく動く。注文に合わせて同じ品質を毎週そろえることが難しい。

飲食店は、仕入れが不安定な食材をメニューの定番に置きにくい。そのため需要は、期間限定のフェアや、ペットフード向けの利用など、用途が分散しがちである。たとえばペットフードは、部位や見た目を問わず引き取れるため、規格外の肉の出口として重要になっている。食用だけに絞らず、複数の出口を組み合わせる設計が、量を増やす局面ではむしろ現実的である。

次の焦点は量の拡大から質の見える化へ

これまでの課題は、とにかく廃棄を減らして利用を増やすことだった。3,000トンを超えた今、問われるのは、買い手が安心して選べる情報をどう添えるかである。

捕獲した日時や場所、処理までの時間、検査の結果を、パッケージや二次元コードで確認できれば、価格の説明がしやすくなる。海外では、鹿肉を産地や狩猟方法で区別して高値で売る例がある。日本でも、地域名と品質情報を組み合わせた売り方が、単価を押し上げる鍵になるだろう。

ビジネスへの影響

飲食店と小売に求められる仕入れの組み方

ジビエを扱う飲食店や小売店は、年間を通じて一定量を買う前提で、処理施設と契約する方法を検討したい。単発の仕入れでは、肉質の差に振り回される。

一方で、全量をジビエに頼る必要はない。メニューの一部を季節の限定品とし、入荷が少ない時期は他の肉に切り替える運用なら、リスクを抑えられる。仕入れ先を二つ以上持つことも、欠品への備えとして有効である。

自治体と処理施設が見直すべき収益構造

処理施設にとっての最大の課題は、赤字になりやすい点である。捕獲者への買い取り価格、人件費、冷蔵設備の維持費に対して、販売単価が追いつかない施設は少なくない。

解決の糸口は、肉の部位ごとに出口を分けることである。ロースやももは飲食店へ、すじや端材はペットフードや加工品へと振り分ければ、一頭あたりの売上が増える。さらに、捕獲から搬入までの時間を記録して品質を数値で示せば、高めの価格を設定する根拠にもなる。

異業種が参入するときの着眼点

ジビエは、観光、宿泊、食品加工、物流と相性がよい。たとえば、温泉地の旅館が地元の処理施設と組み、宿泊プランに食事を組み込めば、安定した需要が生まれる。冷凍食品や缶詰など、日持ちする加工品にすれば、販路は全国に広がる。

ただし、衛生基準の遵守は絶対条件である。認証を受けた施設の肉だけを扱い、問い合わせに答えられる体制を整えておくことが、信用を守る最低限の備えになる。

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