ニュースの概要
JR東日本クロスステーションは、東京駅構内のグランスタ東京にある「STATION RESTAURANT THE CENTRAL」で、秋季限定の国産鹿肉ハンバーグを10月1日から提供すると発表した。メニューの監修を務めるのは、日本ジビエ振興協会の藤木徳彦氏である。鹿肉は牛肉や豚肉と比べて脂が少なく、鉄分が多い食材として知られる。一方で、独特のにおいや固さを敬遠する人も少なくない。そこで今回は、専門家が肉の扱い方と味付けを整え、初めて食べる人にも手に取りやすい洋食の定番であるハンバーグに仕立てた。ジビエ専門店ではなく、出張や旅行で大勢が行き交う駅の飲食店で提供される点が目を引く。
引用元: 【グランスタ東京】日本ジビエ振興協会・藤木徳彦氏が監修!「STATION RESTAURANT THE CENTRAL」にて秋限定『国産 鹿肉ハンバーグ』を10月1日(木)から販売 | 株式会社JR東日本クロスステーションのプレスリリース(PR TIMES)
分析・見解
専門店ではなく駅ナカで売ることの意味
ジビエ(=野生鳥獣の食肉)は、これまで山間部の宿や専門店で食べるものという印象が強かった。東京駅のような巨大な駅は、年間を通じて膨大な数の人が通る場所である。ここで定番料理のハンバーグとして出す価値は、味そのものより、試食の母数が桁違いに増える点にある。ジビエに関心がなかった人が、他のメニューと並べて自然に選べる。この入口の広さが、地方の直売所や道の駅では得にくい効果を生む。
供給の安定が外食展開の最大の壁になる
日本の鹿の捕獲数は年間60万頭規模とされるが、食用として流通する割合は1割に届かないといわれる。残りの多くは現場で埋設や焼却をされている。理由は、捕獲した個体を短時間で食肉処理施設へ運び、衛生基準に沿って解体する必要があるためだ。仕留めてから搬入までの時間が長いと、肉質が落ちる。外食チェーンが求めるのは、毎月ほぼ同じ品質で同じ量が届くことである。季節限定という今回の売り方は、この供給の揺れを逆手に取った現実的な設計だといえる。数量を絞って期間を区切れば、原料が足りなくなるリスクを抑えられる。
監修者の存在が品質への信頼を支える
鹿肉の評価は、個体差と処理の腕で大きく変わる。銃で仕留めたのか罠なのか、血抜きは適切か、冷却までの時間はどうか。これらで味は別物になる。日本ジビエ振興協会は国産ジビエ認証制度の普及にも関わり、処理施設の衛生管理を第三者が確かめる仕組みを広げてきた。監修者が入ることで、消費者は安全面と味の両方で安心しやすくなる。これは大手企業が採用に踏み切る際の社内説明にも効く。ブランド毀損が最も怖い鉄道系企業にとって、認証や専門家の裏付けは参入の必須条件に近い。
駆除から消費へ、需要側から動かす循環
獣害対策は長く、捕獲する側の補助金に依存してきた。しかし、捕獲しても売り先がなければ事業としては続かない。今回のように大都市の需要が見えると、地域の処理施設は設備投資を判断しやすくなる。捕獲、処理、流通、外食が一本の線でつながって初めて、獣害対策は費用を払う活動から、収益を生む産業に変わる。一度の期間限定メニューで市場が変わることはないが、出口の確保という最も欠けていた部分を埋める一歩にはなる。
ビジネスへの影響
外食事業者は限定販売で小さく試すのが得策
ジビエを通年メニューにするには、原料の安定確保と価格の吸収が必要になる。まずは今回のように季節と数量を限り、反応を見るのが堅実である。売れ行きに加えて、残食の量やリピート率、客の年齢層を記録しておくと、次の仕入れ量の根拠になる。ハンバーグのように調理法が決まった料理は、においの調整や固さの対策がしやすく、失敗の確率も低い。ソースやつけ合わせを変えるだけで、同じ肉を別の商品にも展開できる。
地域の事業者は取引先の条件を先に知っておく
処理施設や猟友会、自治体は、都市部の大手が何を求めるかを早めに把握したい。具体的には、衛生認証の有無、冷凍か冷蔵かという納品形態、ロットごとの追跡情報、年間の供給見込みである。これらを整理した資料を用意しておけば、商談の入り口で信頼を得やすい。単価を上げる交渉より、欠品せず品質を保つ実績の積み上げのほうが、長期の契約につながる。
食品や観光の企業は連携先として目を向ける価値がある
ジビエは、地域の物語と社会課題が一体になった食材である。駅の売店、ホテル、冷凍食品、ふるさと納税の返礼品など、販路は広い。大手が出口を作り、地域が品質を守る分担がうまく回れば、双方に利益が出る。まず自社の既存商品に、鹿肉を一部使えないかを検討するところから始めるとよい。