ニュースの概要

千葉県鴨川市で捕獲された野生イノシシ2頭が、豚熱に感染していたことが確認された。県内の野生イノシシで見つかったのは初めてである。県は捕獲地点から半径10キロ以内にある養豚農場を回り、豚に異常がないか、消毒や出入り管理が守られているかを確かめている。豚熱は人にはうつらないが、いったん養豚場に入り込めば、豚の殺処分や出荷の制限につながる。そのため、野生鳥獣を捕まえ、運び、解体し、残りを処分する各段階で、ウイルスを広げない対策が改めて問われている。ジビエ(=野生鳥獣の肉)を扱う事業者にとっても、他人事ではない出来事だ。

引用元: 野生イノシシ2頭から豚熱、千葉県内で初確認 養豚場への感染拡大を警戒(Chiba Nippo)

分析・見解

房総半島まで届いた感染域と、防疫線の移動

豚熱は2018年に岐阜県の養豚場で26年ぶりに確認され、その後、野生イノシシを介して東日本から西日本へと広がった。ワクチン接種によって養豚場での発生は抑えられてきたが、山の中の感染は消えていない。今回の確認は、感染イノシシの分布が、これまで空白だった房総半島まで届いたことを意味する。

海に囲まれた半島は入りにくいと思われがちだ。しかしイノシシは泳ぎも得意で、山づたいに長い距離を動く。地形による安心感は、根拠として弱いと見たほうがよい。

半径10キロの確認が見ているのは、人と物の動き

県が進める半径10キロ圏の農場確認は、イノシシが直接豚舎に入る危険だけを見ているわけではない。むしろ重要なのは、人、車、道具の動きだ。ウイルスは靴底、タイヤ、作業着、運搬用の箱などに付いて運ばれる。柵が壊れていなくても、山で獲物に触れた直後の人が農場に入れば、危険は生じる。

猟師、捕獲従事者、運搬業者、解体施設の作業者が養豚場の近くを通るルートは、点検の対象になる。農場の関係者が狩猟を趣味にしている場合も同じである。

見落とされやすい感染経路は、解体後の廃棄物にある

解体で出る内臓、骨、皮は、扱いを誤ると広がりの原因になる。カラスやタヌキが持ち出せば、ウイルスは数キロ先まで運ばれ得る。豚熱ウイルスは冷蔵や冷凍にも強く、肉や骨の中で長く生き残る。保管場所に屋根と囲いがあるか、運搬車が洗われているかで、リスクは大きく変わる。

ジビエの衛生指針は、もともと食中毒対策を中心に組み立てられてきた。食肉処理では、汚れた区域ときれいな区域を分けるのが基本である。一方、家畜防疫では、地域に入る前と出た後を分ける発想が要る。二つは似ているようで、守る対象が違う。この差を意識している施設は、まだ多くない。

捕獲を強めるほど拡散しかねないという逆説

農作物の被害を減らすため、各地で捕獲目標が引き上げられている。ところが、流行地で無理な追い込みや大規模な駆除を行うと、群れが散らばり、感染した個体が新しい土地へ押し出されることがあると指摘されている。

必要なのは、捕獲を止めることではない。どこで、どの順番で、どの道具を使って捕るかを、防疫と一体で設計することだ。千葉県の今回の事例は、その設計図を地域ぐるみで作り始める機会になる。

ビジネスへの影響

捕獲・解体の現場で今週中に確かめたい三つの点

まず、捕獲現場から施設までの動線を紙に書き出す。車を洗う場所、靴を替える場所、手袋を捨てる場所が決まっているかを見る。次に、運搬用の荷台や箱を、豚や鶏を扱う車と共用していないかを確かめる。最後に、廃棄物の保管場所と委託先の処理方法を聞き取る。囲いのある場所で、焼却や埋却が適切に行われているかが要点である。

どれも大きな費用はかからない。記録が残れば、取引先や自治体への説明材料にもなる。

自治体や養豚農家との連絡網が、信用を左右する

事故が起きてから連絡先を探すのでは遅い。捕獲担当者は、市町村の窓口と家畜保健衛生所の連絡先を、現場に持ち出す書類に載せておきたい。検査で陽性が出たとき、誰が、どの順に知らせるのかも決めておく。

近隣の養豚農家にとって、ジビエ事業者が防疫の手順を自ら公開していることは、安心材料になる。地域で共存するための名刺代わりと考えてよい。

販売先への説明と、止まったときの資金の備え

飲食店や小売店は、豚熱が人にうつらないと理解していても、流行地の肉という印象を気にする。産地、捕獲日、検査の状況を示せるかどうかが、取引を続けられるかの分かれ目になる。

また、感染が確認された地域では、捕獲や搬出が一時的に制限される場合がある。数週間分の運転資金を確保し、休業時の補償が保険で出るかも確認しておきたい。備えは地味だが、止まったときの回復の早さを決める。

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