ニュースの概要

カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営する軽井沢コモングラウンズで、2026年10月9日から11日まで「Karuizawa Holistic Fair 2026」が開催される。自然・身体・生活の調和をテーマにした出店の中に、ジビエ由来の脂肪分などを原料としたスキンケアブランド「gibier skincare」の名前が入っている点が目を引く。これまで食肉としての消費が中心だったジビエ(野生鳥獣肉)の副産物が、美容・ウェルネス分野の原料として商品化され、リゾート地の集客イベントに並ぶまでになったことを示す一例だ。

引用元: 軽井沢コモングラウンズで「Karuizawa Holistic Fair 2026」開催、ジビエ由来スキンケアも出店(PR TIMES)

分析・見解

食肉以外に眠っていた「使われない部位」への着目

野生の鹿や猪などを捕獲・解体する現場では、精肉として売れる部位はごく一部で、皮や脂肪、内臓の多くは廃棄されてきた。全国の年間捕獲頭数は100万頭を超える規模だが、食肉としての利用率は今も1〜2割程度にとどまるとされる。今回出店する「gibier skincare」のように、脂肪分を精製してクリームや石けんの原料にする取り組みは、この「使われない部位」に新しい価値を与える発想だ。獣脂は保湿性の高い脂肪酸を含み、馬油や豚脂(ラード)を美容用途に転用する例は以前からあるが、ジビエ由来はまだ数少ない。希少性そのものが商品の物語になる点が強みだ。

軽井沢という立地選びが示す顧客層の絞り込み

このフェアが避暑地としてのブランド力を持つ軽井沢コモングラウンズで開かれる点も見逃せない。ジビエ美容製品は大量生産・大量消費の日用品ではなく、環境配慮や地域資源の物語に価値を感じる層に向けた高単価商材になりやすい。獣害対策(=有害鳥獣による農作物被害への対応)として捕獲した個体の有効活用は「サステナブル」という文脈と相性が良く、都市部の催事売場よりもこうしたウェルネス系イベントの方が価格への納得感を得やすい。

化粧品原料としての品質管理はこれからの課題

一方で、獣脂を化粧品原料として安定供給するには課題も多い。ジビエは季節や個体、捕獲方法によって脂肪の質にばらつきが出やすく、食肉と違って化粧品には薬機法(=医薬品医療機器等法)上の成分規格や安全性データの提出が求められる。精肉処理とは別ラインでの脂肪抽出・精製工程が必要になり、小規模な処理施設が単独で対応するのは難しい。化粧品メーカー側が原料調達のパートナーとして処理施設と提携する動きが広がるかどうかが、この市場が一過性のブームで終わるか定着するかの分かれ目になる。

海外の動物性コスメ市場との比較で見える伸びしろ

海外ではフィンランドのトナカイ脂肪や北米のバイソン(=北米野牛)脂を使ったスキンケアが、狩猟文化と結び付いた地域ブランドとして定着している例がある。日本のジビエ美容はまだ黎明期だが、捕獲頭数の多さと獣害対策という社会的な後押しがある分、原料調達の面では有利な立場にある。ブランディングと品質保証の仕組みさえ整えば、輸出も視野に入る成長分野になり得る。

ビジネスへの影響

処理施設にとっての新たな収益源としての脂肪分回収

これまで廃棄コストとして扱われてきた脂肪や皮を化粧品原料として販売できれば、処理施設の収益構造そのものを変える可能性がある。精肉の歩留まりの低さはジビエ利活用の長年の課題だったが、副産物の販売先が増えれば、捕獲した個体一頭あたりの収益性が上がる。処理施設側はいきなり大きな設備投資に動くのではなく、まずは化粧品メーカーや化粧品OEM(=他社ブランド向けの受託製造)企業との共同実証から始め、脂肪の質や供給量が事業として成立するかを見極める段階に入るべきだろう。

販路の多角化がもたらすリスク分散という経営効果

ジビエ関連事業は飲食店向け卸売やふるさと納税返礼品など限られた販路に依存しがちで、天候や観光客数の変動に業績が左右されやすい。美容・ウェルネス分野という新しい販路が育てば、食肉需要の落ち込みを補う収益の柱になり得る。地域の観光イベントに出店する形で消費者の反応を直接確かめられる点も、いきなり全国流通を狙うよりリスクが小さい。

自治体・観光地との連携イベントが持つ広報効果

軽井沢のような集客力のある観光地のイベントに出店することは、単なる販売機会にとどまらず、地域の獣害対策の取り組みを来訪者に知ってもらう広報の場にもなる。今後、他地域の処理施設や自治体が同様のウェルネス系イベントへの出店を検討する際は、商品開発と合わせて「どの場でどう伝えるか」という発信戦略までセットで考える必要がある。

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